一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会

ツーバイフォー住宅こそ、安心してリフォームできる!

三井のリフォーム住生活研究所 所長 西田 恭子

日本でツーバイフォー住宅が一般に普及するようになって、30余年が経った。この間、ツーバイフォー住宅は地震に強い、断熱性に優れているという正当な評価を得てきた一方で、なぜか「リフォームしにくい」という間違ったレッテルを貼られてきた。もしかするとツーバイフォー工法の新築物件に関わっている人でさえ、リフォームの時はどうなるのだろうか、と懸念を持っているのではないか?
住生活基本法が制定され、永く住み継ぐことの方向性が示されなければ、安心してツーバイフォー工法で新築することはできない。これから家を建てる人にとっても、すでにツーバイフォー工法の家に住んでいる人にとっても、その家がリフォームできる物件かどうかは大きな関心事だ。
今後、日本のツーバイフォー住宅が、続々とリフォーム適齢期を迎えるにあたり、リフォームの可能性を正しく把握し、これまでの間違った認識を払拭しておく必要があるだろう。

ツーバイフォー住宅にまつわる大きな誤解

「うちはツーバイフォーだから、今、お話しされたようなリフォームはできませんよね」
リフォームセミナーで、リフォームの可能性を講演した後に、参加者からこんな質問を受けた。また、「ツーバイフォー住宅はリフォームしにくいので、増築部分は在来工法でやるそうですね」と言われたこともある。さらに、ひどい場合は「構造がしっかりしているからツーバイフォー住宅を建てようと思っていたけれど、リフォームが難しいと言われたので、在来工法にしました」と。
いったいなにを根拠に、こんなことが巷で広まっているのだろうか?
長く建築に携わってきた者として、ツーバイフォーに関するこうした話を聞き、驚くと同時にツーバイフォー住宅に対する認識が、まだまだこの程度なのかと落胆させられる。
これらは、すべて誤解だ。ツーバイフォー住宅は、決してリフォームしにくいわけではない。リフォームしにくいどころか、ツーバイフォー住宅こそ安心してリフォームできる物件だと私は考えている。
その証拠に、冒頭にあげたような質問を受けるたびに、私はこう答えることにしている。
「いい質問をしてくださいました。リフォームに携わる者として、ツーバイフォー住宅であると聞いて、まず一安心しました」と。

滞りなくリフォームできる安心感

ツーバイフォーリフォーム 7つの基本ルール

なぜリフォームプランナーは安心してツーバイフォー住宅物件をリフォームするのか?構造上のルールが明確だから安心してリフォームを進めていくことができるからだ。
たとえば、在来工法の場合は、構造図がなかったり、あっても図面どおりになっていなかったりするケースがある。その分、解体時に確認する事項が多くなる。もちろん、リフォームプランナーは解体時に望ましい状態でなかった場合も想定し、対応策を用意しておき、予想外の状態であっても適切に対応していく。しかし、そうは言っても、不明点を抱えて着工するのは、不安がつきまとう。
一方、ツーバイフォー住宅の場合は図面があることが多く、床下をのぞき込んだり、天井裏に上ったり、壁をはがしてみたりしなくても、どんな構造になっているかが事前に把握できる。解体してからの変更が少ない。また、リフォームのプランニングを進める際も、できないこととできることがあらかじめはっきりしているので、プラン通りに滞りなくリフォームを進めていくことができる。
もちろん、ルールに則らなければいけないという制約はある。しかし、ルールを把握し、ルールに忠実である限り、問題なくリフォームを進めることができるわけだ。
さらに、ツーバイフォーの場合は、築年数が何年であっても、もともとの基本性能が高いので、耐震性能や断熱性能を現在の基準に合わせるうえで苦労が少ない。これも安心してリフォームできる大きなポイントと言える。

誤解されてしまったワケは…

こんなに明快なツーバイフォーが、どうして、前述したような誤解が広まってしまったのだろう?
「火のないところに煙はたたない」ということわざがあるように、ツーバイフォー住宅のリフォームにまつわる誤解も、なにかしら火元になるものがあるのかもしれない。
これは、あくまで私の推測だが、ツーバイフォー住宅のリフォームにまつわる誤解は、ひとつにツーバイフォー住宅のリフォーム例が少ないことに起因しているのではないか。
リフォームの事例が少ないというと、とかく「厄介だからできないのだろう」「難しいことだからやる人が少ない」というように思われがちだ。しかし、事例が少ないのは決してリフォームするのが困難だからではない。日本においては、まだツーバイフォー住宅のリフォーム事例がそれほど出てこなかっただけのことだ。
そもそも、日本でツーバイフォーが住宅の建築工法として広く認可されるようになったのは、1974年のこと。発祥の地、北米では150年という長い歴史を持つとはいえ、日本では、ツーバイフォー住宅が広く建てられるようになってから、わずか30余年しか経っていないのだ。
一般的に、リフォームの要求が高まるのは、築年数が10年、20年を経過し、ライフスタイルが変わった時と言われている。ツーバイフォー住宅が世間一般に建てられるようになったのが30年前であることを考えれば、これまでにリフォームを必要とするツーバイフォー住宅が少なかったのは、むしろ当然のことだ。

「できない」のではなく「事例が少ない」「ルールを知らない」だけのこと

そして、もうひとつ、誤解を生んだ要因として考えられるのが、構造図の存在だ。
たとえば、在来工法で建てられた物件であれば、どんな大工さんに頼んでも、とりあえずリフォームすることはできる。ところが、ツーバイフォー住宅の場合は、構造図がなければ、たとえどんなにウデのいい大工さんでも、どうしたらいいかわからない。つまり、構造図をきちんと描ける建築士がいなければ、リフォームすることができないのだ。
また、一口に建築士といっても、全員が住宅設計をやっているわけではないうえ、住宅設計をやっている建築士の中でもツーバイフォーを手がけている人は限られている。そして、その限られた建築士のなかでも、リフォームをやったことのある人というのは、さらに少ない。つまり、ツーバイフォー住宅のリフォームを経験したことのある建築士より、経験したことのない建築士のほうが圧倒的に多いのだ。
しかし「ルールを知らないからできない」ことと、「構造的に不可能である」ことは、まったく別次元の話だ。「ルールを知らないからできない」の「ルールを知らないから」という部分がいつの間にか省かれてしまい、「できない」という言葉だけが一人歩きしてしまっている。さらに「できない」ことと「構造的に難しい」ことが混同されてしまい「ツーバイフォーはリフォームしにくい」というイメージが広まったのではないか。
車の運転も操作や交通ルールを覚えれば、慣れればことさら難しいことでもないし、交通ルールに従って運転していれば危険なことはない。ツーバイフォー住宅のリフォームも、構造上のルールを理解していれば、安心して適切なリフォームができるのだ。


ツーバイフォー住宅のリフォームの可能性を知る事例紹介
エレベーターを新設して見晴らしのよい2階のLDKを実現

在来でもツーバイフォーでも、ホームエレベーター設置に関する規定がそれぞれある。その規定をクリアするためには、躯体部分がどうなっているのかを知ることが先決だが、矩計(カナバカリ)図をもとに、グランドラインから各階高が明確に把握でき、事前に構造上の収まりを確認することができた事例。また、1階と2階で出入口の方向が異なるエレベーターを希望されたため、1階2階ともに出入口部分が耐力壁にかからないよう設置する必要があった。設置場所が限定されたが、構造図によりプランニングの段階から適切な設置場所をご提案することができた。

2階の和室を撤去して吹き抜けのある玄関に変更

吹き抜けになった2階の和室は、一部オーバーハング(跳ねだし)になっており、構造上取り除くことができなかった。しかし、その部分を渡り廊下とすることで、単なる邪魔なでっぱりとはせず、観葉植物を置くなどして、下から見上げたときのデザインポイントにした。また、外部に跳ね出し部分を支える新規の壁も設けている。

<絵本屋&カフェ>にコンバージョン

パティオを開放感あふれる魅力的な場所とするため、ブックストア側とティールーム側のサッシを床から天井までオープンになる全開口型大型サッシに付け替えた。どちらの開口部上部の壁も耐力壁ではないので、まぐさをあげることで難なく対応。十分な開口部を安心してとることができた。また、2階は賃貸の住居スペースとしたため、キッチン、バス・洗面を新たに2階に設置。構造図によりを確認することで、給水・排水の引き込み管をどこに配置すればよいか判断することができた。さらに、1階に配管の影響がどの程度でるかも把握できたので、1階ティールームの一部を下がり壁として、そこにダウンライトやピクチャーレールを取り付け、マイナスイメージをプラスにしている。

 

ツーバイフォー住宅の需要は急上昇!

ここ10年間で、ツーバイフォー住宅の戸数はぐっと増えた。耐震性、断熱性・気密性、耐久性など、ツーバイフォー住宅の優れた性能が評価されたからこそ、需要も伸びてきたのであろう。その反面、これだけツーバイフォー住宅はリフォームしにくい、という間違った情報が蔓延しているなかで、ツーバイフォー住宅の需要が伸びているということが、私には不思議なくらいだ。ツーバイフォー住宅に住んでいる人から「うちは、リフォームには向いてませんよね」と言われるのも、とても矛盾を感じる。
なぜなら、新築物件を手に入れた人は、誰もが「リフォーム予備軍」だからだ。もちろん、ライフスタイルに合わせて設計した家。新築してすぐにリフォームの必要に迫られるということはほとんどないが、5年、10年と住むうちに不具合は出てくるし、家族構成やライフスタイルにも必ず変化が生じてくるはずだ。
ツーバイフォーはリフォームしにくいと言われているのを承知で、どうしてツーバイフォー住宅を選ぶのだろうか?いつかリフォームすることになるなど、まったく考えないで家を購入したのだろうか?
住宅を所有した時点から、リフォームはついてまわる。ツーバイフォー住宅に限らず、どんな工法の住宅であっても、住み続けるうえで必ずリフォームを考える時期がやってくる。こんな極めて自然なリフォームの必然性が、まだまだ認識されていないように思う。

これからが適齢期 安心してリフォームしていただくために!

前述のとおり、日本でツーバイフォー住宅が広く活用されるようになったのは今から30余年前のことだ。もっとも古い物件で築32年、その後、続々と建築されたツーバイフォー住宅が、これから築10年、20年を迎えることになる。言ってみればリフォーム適齢期に突入するわけだ。
ツーバイフォー住宅を建築してから、10年、20年と年月を経るうちに、ライフスタイルも大きく変わってきたことだろう。各設備機器も老朽化し、10年前には必要もなかったパソコン機器が、今や我がもの顔でスペースを占めている。
不便な点、不都合な点があれこれあっても、目をつむり我慢して暮らすのか?それとも、今の家を売って別な家に住み替えるのか?
ツーバイフォー住宅は、適切なメンテナンスで50年、100年と住み続けることができる、非常に価値の高い住宅だ。1880年に建てられた札幌の豊平館、1921年に建てられた東京都豊島区の自由学園明日館など、ツーバイフォー工法で造られた歴史的建造物が、今もなお現役で使われていることが、その優れた耐久性を如実に物語っている。現在、ツーバイフォー住宅に住んでいる人は、素晴らしい資産を持っているのだ。生活にマッチしたリフォームを安心して行い、快適に暮らし続けていただきたいと思う。
また、これから住宅を購入する人にも、リフォームにまつわる誤解を捨て、いつか必ず我が家にもリフォーム適齢期がやって来ることを見通したうえで、安心してツーバイフォー住宅を選んでほしいと考えている。


How To リフォーム ツーバイフォー

  Vol.1 ツーバイフォーこそ、リフォームしやすい
  Vol.2 水まわりのリフォーム
  Vol.3 開口部と壁のリフォーム
  Vol.4 増築・減築のポイント 【最終回】

 

西田 恭子(にしだ きょうこ)氏

三井のリフォーム 住生活研究所 所長。
住宅のリフォームを始めて25年。その経験を生かし、リフォームによる「暮らしの創造」に貢献するための住生活研究所所長に就任。約200名の女性建築士集団、リフォームプランナーのデザインスタッフ会会長も務める。新聞・雑誌に作品とコラムを連載。テレビやラジオにもゲスト出演し、各方面からの講演依頼も多い。
一級建築士。文化女子大学造形学部非常勤講師。
著書:『リフォームで永く住み継ぐツーバイフォー』(ニューハウス出版)、『減築リフォームでゆうゆう快適生活』(アーク社)、『中古マンション購入×リフォーム』(アーク出版)など。

 

(一社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」転載記事